第60章

久世玲央は顎を上げ、車内に座る酒井初音を見上げた。瞳に宿った希望が、いったん翳って――それでもまた、かすかに灯る。

少なくとも、会えた。会えたじゃないか。

さっきまで袋叩きにされていた玲央は、胸に抱えたマンゴーケーキだけは死守していた。少し潰れて、もともと褒められた見た目でもないそれが、さらに不格好になってしまったけれど。

それでも――汚れてはいない。食べられる。

箱を抱えたまま、玲央は足を引きずり、車の前まで歩いた。

顔には久世湊に殴られた青紫の痕。さらに久世隆臣に叩かれた平手の跡までくっきり残っている。

それでも痛みを噛み殺し、酒井初音に向けて無理やり笑った。

「初音、見て...

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